クマムシの観察。近所の苔からクマムシを30分で見つける方法

クマムシの観察。近所の苔からクマムシを30分で見つける方法
2017/11/05

クマムシを顕微鏡観察

先日、息子(年長)と一緒にクマムシの顕微鏡観察しました。

玄関を出て、コケとってきて、動き回るクマムシを観察まで計30分ほどでした。

その方法を解説します。

珍しい生き物と思われがちですが、実は日本全国、道路の苔(コケ)や公園の木の皮など身近な環境にたくさんいます。それを見つけるのに少しのテクニックと顕微鏡という武器は必要ですが、見つけるたび、新しい喜びがあります。

ここではそのテクニックを含め、その『30分でクマムシ見つけた方法』を伝授します♪

そもそもクマムシってなに?

下の記事で詳しく解説しています。不死身、地球最強と言われる生き物で、よくテレビでも出てきますね。

ちなみに、クマムシは少なくとも5億年前からいることが化石などから分かっています。究極の生存戦略を持っているってことですね。恐竜が『2億3000万年前〜6600万年前まで(その後絶滅)』、シーラカンスが『3億5000万年前〜現在』ですから、クマムシは生きた化石を超えている⁉

お子さんとクマムシを観察すれば、太古のロマンを観じることができるかも。子供の理科心を刺激できるかも♪

コンクリートの壁のコケのクマムシ

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30分でクマムシ発見。ベールマン捕集装置も時計皿も使わない♪

面倒くさかったので、ピンセットも時計皿もシャーレも使いませんでした。クマムシを観察するためによく使われるベールマン捕集装置(明かりでクマムシをペットボトルの底に集める装置)も使いません。手にしたのは、100均で買ったポリ袋だけ。

では、どうやったか、クマムシ採取のおおまかな手順を少し詳しく説明します。

クマムシを30分で観察する方法


①ジップロック付きのビニール袋(100均で購入)を手に玄関を出ます。
クマムシの採取と観察①
②ギンゴケを見つけたらビニール袋に入れます。どれがギンゴケか区別の仕方は下の「『クマムシがたくさんいる苔=ギンゴケ』の見つけ方」で解説しています。
クマムシの採取と観察②
③マジックで採った場所やコケの様子を記録して、
クマムシの採取と観察3
④家に帰ったら水(ペットボトルの天然水)を少量添加(ホームセンターで売っているスポイトを使いましたが、お弁当によくついている醤油差しでも構いません)。20分経ったら、スポイトや醤油差しの口をコケに押し当ててコケに染み込んだ水分を吸い取り、一滴スライドガラスに乗せて観察します。

観察準備は以上です。

ギンゴケってどれ?雨上がりでもいいの?水の量は?など疑問が生じたかもしれません。次の『詳細・コツ』を読んでください。

詳細・コツ

コケ採取のコンディション

コケはぬれていても、乾いていても、クマムシは見つけられます。

雨の日や雨上がりの苔は、すでに元気に動くクマムシをすぐに見つけやすいようです(死んでるクマムシが見つかることも多いですが)。

連続して晴れが続いた次の日の苔も水を加えて20分ほど待てば、乾眠状態から起きて元気よく動くクマムシが見つけられます。

大事なのはどの苔を採るか?

クマムシがたくさんいる苔とあんまりいない苔が実際にはあります。ここはとても大事なポイントです。クマムシがたくさんいそうなコケを確実に採ってくること。これが30分で観察する秘訣です。

そして、クマムシがたくさんいるコケ、それはギンゴケです。

『クマムシがたくさんいる苔=ギンゴケ』の見つけ方

ギンゴケはコンパクトなコケです。

森の土の上に広がるふかふかしたコケではなく、コンクリートや古い建物のモルタル壁にチビチビついてるコケです。触るとぽろぽろ落ちてしまうようなコケです。

ギンゴケってどれ?

たしかに外に出てみるとどれがギンゴケなのか初心者には分かりません。

そこで、写真でクマムシを見つけやすいコケを教えます。

下に3枚のコケの写真を並べました。中央と右写真がギンゴケです。

クマムシがあまりいないコケ クマムシがいそうなコケ1 クマムシがいそうなコケ2
ホソウリゴケ(森の土に広がるふかふかのコケ)     

 

クマムシ発見率:

ギンゴケ      

 

クマムシ発見率:

ギンゴケ      

 

クマムシ発見率:

 

いかにもコケコケしたものより、みすぼらしくちょびっと生えてるコケの方がクマムシが多いのは不思議です。道路脇や古いコンクリートの壁やモルタルの壁についたカラカラに乾いたコケがおすすめです。採取するコケの量ですが、これくらいで十分です(ひとつまみ、ふたつまみくらい)↓

添加する水の量

水は加えすぎてはダメです。クマムシの濃度が薄まるからです。

コケがわずかに膨らむ程度に水を加えます。はじめは水を弾きますが、時間がたつとコケが水を吸い込みます。吸い込んだ後に水が残らない程度がベストと思います。その状態で20分放置。そのあいだにクマムシが目覚め、動き出します。これを観察します。

サンプル水の取り方

コケにスポイトを突き刺して水を吸い取り、その水をグジュグジュと出し入れしてコケのデブリ(ゴミや生き物)を吸い取ります。

スライドガラスへの垂らし方

吸い取ったサンプル水を下の写真のように、薄くのぺ〜と広げると効率的に探せるのでおすすめ。律儀にカバーガラスはかけなくていいでしょう。

クマムシを探す際はスライドガラスにサンプル水を延ばすといい

どんな風に見えるか?

顕微鏡は生物顕微鏡がオススメ

顕微鏡は生物顕微鏡がおすすめ。実体顕微鏡はあまりおすすめしません。実体顕微鏡だと体の細部まで観察できないからです。ときどきクマムシは体の中に卵を持っていることがありますが、生物顕微鏡だとよく観察できます(もちろん50万くらいするような高性能の実体顕微鏡なら観察可能ですが)。

今は生物顕微鏡も安くなりました。信頼できて、なるべく安い光学顕微鏡は以下です。


PCが画像を出せるタイプは以下


顕微鏡観察方法はこちらにまとめました→ご家庭で顕微鏡観察する方法

大事なのは鮮明に見えること。とくに子供は生物の精緻さを生で見れると見れないとでは、興味が変わってくると思います。鮮明に観察できれば、子供の好奇心も高まると思います。

では実際に顕微鏡でクマムシはどのようにみえるでしょうか?

接眼レンズを覗いたときクマムシはどれくらいの大きさか?

実際に顕微鏡でクマムシは以下のように見えます。これを参考にしてクマムシを探してみて下さい。

対物4倍(接眼10倍なので計40倍)だと小さく見える。広い範囲が見渡せるのでクマムシを探すときにはこの倍率がおすすめです
対物10倍(接眼10倍なので計100倍)だと結構大きく見える。
かわいいクマムシ
対物40倍(接眼10倍なので計400倍)だと爪や口など細部まで見える。これが生物顕微鏡の醍醐味♪

この方法で実際に見えたクマムシたち(写真、動画紹介)

では、この方法で実際に見えたクマムシたちをご紹介します。

モルタル壁のコケ(山梨県甲府市)

コンクリートの壁のコケのクマムシ

目が赤く、体が緑色をしたクマムシ発見。生物顕微鏡だとクマムシの体の中の構造まで鮮明に見れる。

 

くまむしの顕微鏡ミクロ写真

こんなクマムシもいました。

 

 

道路のコケ

道路のわきのコケにいたクマムシが下(生物顕微鏡で観察。400倍。接眼レンズ10倍、対物レンズ40倍)

 

かわいいクマムシ

このクマムシは脚をゆっくり動かし、合計32本も爪を持っていました。

 

樹の皮

別の日、山梨県北杜市の公園。昔クマムシは木の皮にもいると読んだことがあったので、公園に生えた木の皮も試しに調べました。クルミの木の樹皮を少しだけとってビニール袋にいれて近くの小川の水をちょっと入れて持ち帰り。(こういうことするとクマムシが木の皮由来なのか小川由来なのか分からなくなるので、研究的にはNGですね、、、)

するとこんなクマムシがいました。

 

クマムシの顕微鏡ミクロ写真

さっきのと比べると動きが速く、こっちの方が体が透き通ってた。2つちいさな黒い目があってかわいい。

 

岩の上のコケ

同じく山梨県北杜市にある公園の岩の上のコケ。

こんなのがいました。

 

以上、観察結果です。

是非皆さんもクマムシ観察してみてください。ふつうに楽しいです♪

 

以下はクマムシの少しめずらしい映像です。偶然撮れました!

 

クマムシの脱皮

クマムシもザリガニみたいに脱皮するようです。

 

ころがるクマムシ

撮影のときにカバーガラスを少し横に動かしたら転がりました。手足がぷりぷりしてるのが分かります。

 

以上、クマムシを30分で観察する方法&クマムシ解説でした。皆さんもぜひクマムシを見つけてみてはいかがでしょうか?

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中部地方・関東地方を中心に虫や鳥、魚の写真を撮っています。