森に住む大きなアリは奪う側と奪われる側になった。
そのバランスが何十万年以上も保たれてきたのだから、彼らは「奪うこと」と「奪い尽くすこと」を区別していると言えるかもしれない。
カッコウの托卵と同じくこの手の「進化の軍拡競争」において、「奪い尽くさない」調整を奪う側がしているとしたら、その競争はすでに奪う側の手中にあると言える。あるいは、これまでの地球の歴史の中で、その何百倍もの終焉した軍拡競争があったのなら、それは茶番とは言えない。
もくじ
トゲアリとは?
トゲアリは背中にいくつかトゲがある大きめのアリ。
クヌギの朽ち木などがある森に住み、他のアリの巣を巧妙にのっとる生態を持つ。
トゲアリの分類
ハチ目/スズメバチ上科/アリ科/ヤマアリ亜科/トゲアリ属
トゲアリの大きさ
体長 7〜8mm(働きアリ)、12mm(女王アリ)
トゲアリを見かける頻度
★★☆☆☆
トゲアリを見かける時期
4〜10月
トゲアリの分布
本州〜九州
トゲアリの生態・特徴
トゲアリの働きアリは赤と黒のコントラストが鮮明な美しい大型のアリで、胸部と腹柄節に3対、計6本の鋭いトゲがある。
トゲアリのオスは翅が生えていて、トゲはなく、毛深い。
クヌギなどの雑木林で大きな広葉樹(クヌギ、コナラ、サクラ、スダジイ)の洞(うろ)や割れ目に巣を作る。「巣を作る」というのは正確な言い方ではなく、もともと他のアリがそこに巣を作っていたのを横取りしたということである。
トゲアリは他のアリの巣を乗っ取るやり方がまるで工作員
乗っ取ると聞くと力づくで奪うイメージだが、実際はそうではなく、「一時的社会寄生」と呼ばれる方法で時間をかけて乗っ取る。そのやり方は以下。
- まずトゲアリの女王アリがムネアカオオアリやクロオオアリの働きアリに乗り、その働きアリのにおいを自分につける。
- 女王アリは巣の働きアリに総攻撃を受けつつも、巣の隅に逃げながら、また適度に戦って働きアリの匂いを再度自分につけながら、じっと巣に溶け込むタイミングを待つ。
- やがて、巣の奥深くに入り込み、その巣本来の女王アリを殺し、巣を乗っ取る。
- 卵を産み、自分の子を巣の既存の働きアリに育てさせ、トゲアリを次々誕生させる。働きアリたちは寿命で死んでいき、巣はトゲアリで入れ替わる。
- しかし、成功率は低く、多くのトゲアリ女王は戦いに敗れて死ぬことが多い。
トゲアリが乗っ取りを行うターゲットのアリ種
クロオオアリやムネアカオオアリ、ミカドオオアリの巣をのっとることが知られる。
他に「一時的社会寄生」(巣の長期戦略的乗っ取り)を行うアリ
トゲアリ以外にも、テラニシクサアリ、クロクサアリ、アメイロケアリ、ヒラアシクサアリが知られる。
トゲアリは絶滅危惧種
トゲアリは環境省レッドリストにて『絶滅危惧Ⅱ類』に指定されている絶滅危惧種。