分類
バッタ目/アリツカコオロギ科/アリツカコオロギ属
※このページではアリヅカコオロギ属について解説。特定の種について説明しているわけではない。
アリヅカコオロギの大きさ
2.5~3mm (共生するアリの種により大きさが違う)
小さなアリであるトビイロシワアリの巣にいるアリヅカコオロギは2、3mmと小さく、一方で、国内最大のムネアカオオアリの巣にいるアリヅカコオロギはムネアカオオアリくらい大きい。
よって、その巣のアリの大きさに近い大きさへと進化したようである。
アリヅカコオロギの生態・特徴
その名の通り、アリの巣で暮らすコオロギだが、その生態は謎が多い。
アリヅカコオロギは働きアリの体の匂いを自分の体につけて、アリの仲間に成りすましていると言われる。これは、トゲアリの女王アリが他のアリの巣を乗っ取るときの戦略とよく似ている。いずれも、アリの眼は光の方向や太陽の方向は鋭敏に感じ取れるものの視力は弱いと考えられており、「獲物か仲間か」を眼ではなく匂いで決めているため、このようなだましが成り立つとされる。
トゲアリの女王アリが働きアリに敵だとバレて巣の乗っ取りの失敗するのと同じく、アリヅカコオロギも気付かれて働きアリから攻撃を受けることがある。
ただし、トゲアリの女王がそうなった場合多くは息絶えるが、アリヅカコオロギはコオロギ特有の強靱な後ろ足でピョンピョン跳ね、逃げ切ることができる。これにより攻撃をかわし、命を奪われることは少ないようである。しかし、アリヅカコオロギの生態にはまだ分からない点が多く、実際には息絶えている個体も多いかもしれない。
巣になじめば、アリヅカコオロギはその巣の働きアリから口移しでエサを受け取れることになる。
なぜ、多くのコオロギが草地で暮らしているのにこのコオロギはわざわざこのような危険な暮らしを選んだかは理解しがたい。しかし人間にも、危険やスリルをあえて選ぶ人はいる。あるいは、私から見れば平穏そうにみえる草地もコオロギにとっては天敵だらけで、アリの巣内部とそう変わらない世知辛い場所なのかもしれない。
退化した翅(はね)
本来バッタやコオロギには翅があるが、アリの巣では飛ぶ必要がないため、アリヅカコオロギの翅は跡形も無く退化している。
発達した感覚毛
お尻に2本ある長い毛は、感覚毛と呼ばれる器官で、周囲の空気の震動の変化を鋭敏に察知できる。もともとバッタに備わっている器官であるが、通常後方に向けて生えている。しかし、アリヅカコオロギの場合、感覚毛が後方ではなく横向きに生える。これでアリの動きを事前に察知し、自分に襲いかかろうとするアリをすんでのところでかわすという。