初めてオオタカをレンズ越しに捉えた日のことをいまも鮮明に覚えています。ハトを急襲し失敗に終わったオオタカ(幼鳥)は私のすぐ目の前の木立に止まり、しばらくじっとしていました。辺りを見回しますが、ときには車内の私をじっと見ることもありました。
私は静かに窓を開け、レンズをとてもゆっくり差し出して、無心で撮りつづけました。
端正な顔立ち、油断を排した目つき。静かな落ち着きと緊張感。動物の表情というものに私ははっとさせられました。
古来より鷹狩りに調教されたオオタカ
古来より鷹狩りに用いられたオオタカ。一説には、古墳時代にはすでに鷹狩りが行われていたとも(このときからオオタカが使われていたかは不明)。
江戸時代になると鷹狩りは盛んに行われるようになり、主にオオタカやハイタカ、ハヤブサのすべてメスが使われました。森の中の巣から雛を人が取ってきて、育て調教したのですが、その雛をとる巣がある山一帯は大名によって人の立ち入りが厳しく禁止されました。今も御鷹巣山という地名で残っている(山梨県、群馬県)。
ちなみに、鷲・鷹が住む山はそれだけでそのまま地名になる例もあります。それほど、昔の人は鷲や鷹を敬い重んじていたということでしょうか。
オオタカの分類
鳥綱/タカ目/タカ科/ハイタカ属
学名
Accipiter gentilis
オオタカの大きさ
全長50cm(オス)、約60cm(メス)。メスの方が少し大きい。
オオタカの分布
日本全土。海外でも、ユーラシア大陸、北アメリカ大陸など広く分布。
オオタカの生態・特徴
里山、平野、水田地帯、山地、高山など広く分布しています。また、それらの異なる環境を縦断して行動します。最近では都市部でも捕食や繁殖が報告されています。
飛翔スピードが速く、また飛行中の切り返しも機敏で、ハトやウサギなどを捕まえます。空中で捕らえることもあれば、地上で捕らえることもあり、ハヤブサのように飛行中のハトやヒヨドリを傷つけて捕まえることに特化した猛禽類と比べると、捕食行動は比較的柔軟です。
急襲に失敗しても狙った獲物を執拗に追いかけます。また、近くの木の枝にとまってしばらく辺りの様子をうかがい、別の獲物を襲うこともあります。
オオタカの希少性・保護の歴史
オオタカは20世紀に開発などにより数が激減し、1984年の調査では全国の生息数は400羽と報告され、のちに「希少野生動植物種」に指定されました。
これまで、ダムや道路、産廃施設などが建設される際には、オオタカなど(他にもイヌワシ、クマタカなど)希少な猛禽類の生息状況調査やモニタリングが行われ、生息環境への影響がないか事前に調査されてきました。営巣が見つかれば、その営巣木が建設によって大きな影響を受けると評価された場合、建設計画の一部が中止されることもありました。
そんな保護の甲斐あり、またオオタカ自身が都会へ適応したこともあり、個体数は順調に回復し、2006年に「環境省レッドリスト」指定から、2017年に「希少野生動植物」指定から外されました。