蛾を『アオ』と結ぶ感性は、先人が残した財産のよう。
新緑の淡い緑を幾重にも薄めて、そっと広げたような翅の色合いを見れば、その趣(おもむき)に合点がいく。
重なれば色が濃くなるのは障子紙のようで繊細。
オナガミズアオの分類
チョウ目/ヤママユガ科
見かける頻度
★★☆☆☆
絶滅危惧レベル・レッドリストの分類
- 準絶滅危惧種(NT)(環境省レッドリスト)
- 準絶滅危惧(NT)(大阪府)
- 留意種(N)(長野県)
- 要注目種(栃木県、福井県)
オナガミズアオの特徴、生態
似ている種にオオミズアオ(こちらの方が有名)がいる。区別は、前翅先端の濃い赤い線の前方に白帯があるかどうか。また、尾が長いかどうか。白帯があればオナガミズアオ。尾が長ければやはりオナガミズアオ。とはいえ、判別の難しい個体もいるという。人気のオオミズアオよりもオナガミズアオの方が好きという昆虫ファンも多い。
幼虫はハンノキなどの葉を食草。
ヤママユガ科と長野の養蚕
本科のヤママユガ科は長野県安曇野地域では昔から、天蚕(ヤママユガを利用した養蚕)などとして利用され、繭(まゆ)から絹糸が採られた。
緑色の繭となり、この繭から採れる糸はふつうの絹糸よりも強く弾力があり、しわになりにくかった。
そのため、「繊維の女王」、「繊維のダイヤモンド」などと言われ、時には一般の絹糸の70倍の値で売れることもあったという。
ただし、オナガミズアオでの養蚕はあまり行われなかった。行われたのは、サクサン(柞蚕)、ヤママユガ(天蚕)、クスサン、テグスサン、オオミズアオなどの蛾であった。