【見かける時期】春から秋
【大きさ】14mm程度
【集まる花】ミソハギ、ニンジンボク、ヨモギ、ルリタマアザミ、ネジバナなど
【生息地域】本州など
トモンハナバチ(Anthidium septemspinosum)
なぜ間を開けたのか、他の蜂たちは単に黄色の輪にしたのに。この蜂の面白いところはお尻の黄色の模様。頭から腹部にかけて対をなす計10個(メス)の黄色い斑紋(十紋、トモン)はもはやデザインの領域。あえて黄色の紋を左右で繋げずに中心で切り、その切り幅も頭へ向かうほど広くすることでV字の型を浮き出す。あなたはどうやってこんなデザインを思いついたのですか?
トモンハナバチの生態
成虫はミソハギ、ニンジンボク、ヨモギ、ルリタマアザミ、ネジバナなどに飛来します。また、ヨモギやルリタマアザミなどの茎部分から綿毛を切り取り、それを巣材にします。そのため、口にはカミキリムシのようにキバがあります。
巣材といってもスズメのように巣の敷床にするわけではなく、ヨシや竹の内部に仕切りとして使います。各々の仕切り(育房と呼ぶ)の中にはそれぞれ卵が産み付けられることになり、蜜や花粉がエサとして貯蔵されます。のちに卵から孵化した幼虫は、その花粉を食べて成長します。綿毛をたくさん抱えて巣へ向かうトモンハナバチを見ると、人も鳥も虫も同じことをしているんだなと気づかされます。
そんな変わった習性を持つトモンハナバチ。実はこの蜂にも寄生バチの存在が知られています。いわゆる労働寄生です。ヨコジマコバネニクバエ(ハキリバチヤドリバエ?)は、(おそらくトモンハナバチも含む)ハキリバチ科の蜂を追いかけて巣を見つけて卵を産み、育房に貯蔵されたエサ(蜜や花粉)を食べて成虫になります。
そのため、トモンハナバチの近くに、一定の距離を保ってトモンハナバチの方を向いて監視する一回り小さい寄生ハエもいっしょに観察できることもあります。
寄生バチに睨まれた油断ならない生活の中でも、トモンハナバチはデザインを忘れなかったということでしょうか。「トモンのデザイン」には深いストーリーが横たわっていそうですが、それを知る者はいまのところこの世界にはいないようです。ちなみにこの寄生バチにも同様の紋様があるのは、まだ解き明かされていない進化の仕組みのヒントである気がしてならないのは私だけでしょうか。
ハチとその寄生バチが同じ光沢や紋様を持つ他の例↓
トモンハナバチの減少・絶滅危惧種
トモンハナバチは宮城県のレッドリストでは絶滅危惧Ⅰ種に、茨城県、栃木県、群馬県では絶滅危惧Ⅱ種、京都府では「要注目種」に指定されています。おそらく東京や大阪など都市部を持つ都道府県では絶滅に近い状態と推測されます(しかし東京のレッドリストにトモンハナバチが載っていないのはなぜでしょう?)。